2010年06月05日

"Food, Inc."


Food Inc (Ws Dub Sub Ac3 Dol) [DVD] [Import]

Food Inc (Ws Dub Sub Ac3 Dol) [DVD] [Import]

  • 出版社/メーカー: Magnolia
  • メディア: DVD



たまにはDocumentary Filmの話題でも。
気づいたら、ここ最近アニメ関連しかうpしてなかったからね(w。
いや、他の映画も観ちゃいるんだけど、なかなか書いてる暇やモチベーションがなくてね。
それに、レンタルとかしなくても観れるこっちの映画(映画館向け)だと、ここ最近は「ダークナイト」以外は見事なまでにハズレばっかりだったから、あんまり観に行くモチベーションが上がらないってのもある。

で、なんでこの映画かと言うと、大学の授業(社会学)で観せられたから(w。
さすがは「華氏911」上映後の映画館で、スタンディング・オベーションが起きる地域なだけはある。
受けていた社会学のクラスだけならまだしも、他の英語のクラスでもなぜか教材として使われていた(w。
というわけで、この映画、日本人にはほとんど馴染みがない映画だろう。
そりゃそうだ、アメリカ国内の食糧問題に焦点を当てた映画なのだから。
正確には食品業界の裏のお話と言い換えてもいいだろう。
ちなみにこの映画、観せてくれたのは黒人の先生(英語のほうはどうもイギリス出身の先生のようだ)だった。
ああ、なるほどねって思えるようになったら、ある意味あなたのアメリカ生活も一人前です(謎。
余談ではあるが、この地域では、高校の時に3年生全員に対し「シンドラーのリスト」の上映会をやっていました(w。

で、具体的にどのような事が描かれていたかと言うと、いかにアメリカの食品産業(特に肉と野菜とファスト・フード)が国民(特に低所得者層)の健康に害を及ぼし、莫大な利益を上げ、政治と癒着しているかを告発した内容です。
まぁ、一部はアメリカだけに限らず、日本や世界中でも共通の問題を抱えていると思う。
とりあえず、まさに資本主義万歳なアメリカの大手食品会社のポリシーはというと、ズバリ"いかに原材料よりも安い原価で売り出す為に、自然製品である食料を工業製品化するか"
大量に供給する為なら、遺伝子的に草しか食べてこなかった牛たちに、安価に大量生産可能なトウモロコシを与え続けることなんてのは序の口。
当然そのトウモロコシだって完全に自然なものか?というと・・・。
鶏も豚の扱いもほぼ同じ。
食用鶏なんぞ、昔の倍以上のスピードで成長させられている。
そうして丸々太らされ、自重を支えきれなくなり、寝たきり同然な肥満鶏や肥満牛や肥満豚を、密封された暗闇の工場で大量かつぎゅうぎゅう詰めで飼育し、流れ作業でどんどん食肉へと処理していく。
大手食品会社は工場だけでなく、契約農家とも高額な初期投資で契約するだけでなく、何かにつけて追加投資を契約と引換に要求し続けることで、なかば強制的に弱小農家を奴隷化していく。
さらには、自社の利益に影響が出ると考えれば、負けるとわかっている裁判でも、告発相手や商売敵となる個人を、一般人だけならまだしも、あのオプラ・ウィンフリー(うーん、日本人にはどう説明したらいいんだろ?アメリカの女版みのもんた??的ポジションの有名人)でさえ、破産もしくは金銭的損害を与える為だけに訴えていき、抑止力としていく食品会社なんてのもでてくる。
そして、彼らが工業製品化し、大量生産したトウモロコシや大豆は、家畜飼料だけでなく、ありとあらゆる加工食品や工業製品の"隠し味"にも使われていく。
こうして、原材料よりも安い"食品"(原価)で利益を上げるビジネスを作り上げ、自炊するよりも、ファスト・フードで買ったほうが安くなると言う普通なら考えられないサイクルが生まれていく。

文字だけで読んでいくと、なんだどこのビジネスでもよくある裏側じゃんとか思うかもしれないが、実際に飼育小屋の状況や食肉処理工場の映像を観せられると、その日は特に肉料理が食べたくなくなる(w。
ついでに言うと、格差社会の本場であるアメリカの低所得者にとっては深刻な問題で、彼らには自炊より安い"不自然食品"しかチョイスがない状況になっていく。
なにせ野菜1個の値段とハンバーガーの値段が一緒なのだから。
近年、アメリカでは肥満児と若年性糖尿病が増えていて、その割合は子供たちの1/3らしいが、そのうち半分はマイノリティ、つまり、十中八九低所得層だ。
ある食肉会社は、自由貿易協定の名の下に、アメリカから大量の"不自然"農作物をメキシコで流通させられ、廃業に陥った農民をリクルートし、食肉加工工場で働かせる。
だが、マトモな雇用形態をとっていないケースもあり、次々と不法移民として労働者達は見つかり次第摘発されていってしまう。
だが、これらがこの映画以外で大きなニュースになったことなんて聞いたことがなく、今でも会社はもちろん工場も存続していく。
そして、こう言ってはなんだが、一番おもしろかったのが、これら食品事業の安全性を保証するべき立場にあるFDA(アメリカ食品医薬品局)や政府の関連省庁の重要なポストに、これら大手食品会社の役員や顧問弁護士出身者が、それも歴代の政権の中で就いてきたということだ。
そりゃ、各国に比べて遺伝子組み換え食品の規制がゆるいのも納得ってなもんだ。

日本じゃ企業献金の禁止だのあーだこーだが議論されてるが、アメリカじゃ企業献金どころか、企業利権が堂々と政治をも動かしているのが特徴なのだ。
食品に限らず、大統領選挙で候補者が全米ライフル協会に出向いてお伺いをたてるのは有名な話だし、医療保険、軍需産業、石油産業、金融産業など、もはや噂レヴェルを通り越して様々な産業利権が政治と密接に絡み合っている。
官民癒着だと、日本ではよく天下りなどが話題になるが、アメリカのこの状態は"天上がり"とでも呼べば良いのだろうか?
まぁ、日本と違って上から目線で恐喝して、下界に降りてくるのではなく、下から上に上がって睨みを効かせてくるあたり、勇敢というか、努力家と言うか、開拓精神というか、卑屈さを感じさせないあたり、民族性の違いというか優位性というか、とにかく日本人よりはマシなのかもしれないが(皮肉)。
こうして富を築いた成功者達が、政治をも動かし、消費者をコントロールし、利権を確保することで、格差が広がっていくのだ。
まぁ、それでも才能次第によっては、あちら側に行ける可能性が0ではないだけ、格差固定とは言い難く、大化けした時のリターンの大きさは日本より大きい分マシという意見もあるかもしれないが。
もちろん、内政が民間の叩き上げ上がりの利権確保方式で進められているから、そのノウ・ハウが外交にも生かされ、前述のメキシコの状態にも繋がるわけだ。
無論、日本や他の国にとっても対岸の火事ではない
でも、だからアメリカは強い。
まぁ、その分、基本的に世界中で嫌われてるけど(w。
でも、このしたたかさの半分ぐらいでもいいから、日本の政治家にわけてほしかったりもする。
もっとも、アメリカじゃなくても、先進国(強者)だったらどこでも、発展途上国(弱者)相手に似たような商売はしてるとはずだけどね、たとえ国レヴェルではやらなくても、民間レヴェルでなら。

で、まぁ、この映画及び栄養学的な観点からの結論としては、とにかく可能な限り植物優先な食事を、肉も野菜も可能な限り自分の地域で生産されたモノを農家から直送してもらうか現地で買う、どうしてもデパートで買うときは壁伝いに歩いて生鮮食品以外は買うなデパートの真ん中にある加工食品はほぼ間違いなく"不自然"食品加工物が含まれているので買うな、ってことになる。
血生臭い映像や動物虐待的な映像が含まれているので(もっとも、"流血"シーンはほとんどない。いわゆる誰が観ても明らかにグロい映像は含まれていないと言えるレヴェルだと思う)、上映中に目を背けたり、見終わった後に今日からベジタリアンになるとか言う人がチラホラと出てくるこの映画なのだが、では、実際にこの映画が推奨した通りの生活を皆が始められるかと言うと、不可能だろうね。
イノセンス」っていうか、ケネディ・フレイザーじゃないけど、残念ながら"世界は偉人(金持ち)たちの水準で生きることはできない"からだ。
LE ROI TRISTEもさすがに観たその日の晩飯はラーメンにせざるを得なかったが(それでも豚骨で、チャーシューつきだったが 笑)、次の日から普通に焼肉食ってたし(w。
とにかく、こういった実情を知って選べる金銭的余裕がある人はいい。
普通にオーガニック食品専門店に乗り換えるか、農家に買いに行けばいいし、大富豪なら大規模な自宅農園でも作れるだろう。
だが、この映画でも出てきたが、自炊する時間的及び金銭的余裕もない底辺の低所得労働者層はどうする?
LE ROI TRISTEみたいに創作活動(趣味)の為に生活を切り詰めてる貧乏芸術家(暇人)はどうする(w??
今さらこんなこと言われたって、どうにもならないんだよ。
某「買ってはいけない」とかもそうなんだけど、もうほんとイチイチこういうのを気にしてたら何にも出来ないんだよね。
だって、気づいた時には、生まれた時には、すでに世の中はこういう風に出来上がっていたんだから。

ある意味、何にも出来ない=生きられないに近い(w。
残念ながら、一度浮かせたお金で贅沢をすることを覚えたら、その味を簡単に忘れるのは不可能だろう。
それを煩悩だと堕落だのと表現することは簡単だし、実際にそうなのだろう。
だが、かといってみんながみんなお釈迦様のように全てを捨てて坐禅生活が出来るような"人間"水準を持っていたら、こんな問題も、戦争ですらとっくになくなっていただろう
でも、無くなっていないのが現実なのは周知の通り。
少なくともLE ROI TRISTEは、普段は安く食費を抑え、その分浮いたお金を機材に注ぎ込んだり、特別な時に高い店で食べるような生活をしている(w。
好きなことをやっていけるのなら、多少長生き出来なくても構わないと思っているからだ。
即死に繋がるような危険性がない限り、余計な食費を抑えられるのは歓迎なので、その点では、これら大手食品会社やレストランとも利害が一致していると言われても、否定はできないだろう。
どの程度寿命に影響が出るのかは知らないが、これらと付き合い続けることで縮む寿命はどれくらいだろうか?どんなに多くても20年以内じゃなかろうか??
なら、その分浮いたお金で贅沢したほうがいいと。
どちらにしろ、老人になるまで生きたいとは思わない主義なので、即死しない限りはそれでも構わない主義だからだ。
今さら生き方を変えようにも、身の回りのチョイスが限られている現実は一緒なのだから。

だが、これでも主義で選べるだけまだマシだ。
本気で主義でも食生活を選べない層が大量にこの国、いや、貧国には存在している。
アメリカに限った話でも、低所得者層に配給される寄付食品のほとんどは保存性のある加工食品、つまり"不自然"食品加工物入りの食料しかない。
じゃぁ、誰かが毎日新鮮な自然野菜や自然食肉を彼らに寄付してくれるのか?
それも無理だ、なぜなら自然栽培や自然養育では追いつけるとは思えない
それぐらいこの国の貧困層は、大量に溢れてしまっているからだ。
つまり、何らかの民主的な方法で、これらの利権体質を改善出来たとしても、結局は彼らのライフ・ラインを奪う結果になるだけだろう。
何故なら彼らに自炊させる為には、食料品の物価を適正値にしなければならない以上、彼らの給料(生活水準)を上げるしかないのだが、それは食品産業を改善するだけではどうにもならないからだ。
この映画では最後に、あれだけ巨大だったタバコ産業も衰退させることができた、これを見本にしてがんばろうみたいなメッセージが出てくるのだが、正直、タバコと食料を同列で扱うのは無理がある。
なぜなら、別にタバコが無くなっても、ごく一部の喫煙末期患者がキレるだけで、人類は問題なく生きていけるが、食料が無くなったら人類は滅亡するからだ。

ああ、ちなみに人類総ヴェジタリアン化っていうのも無理よ。
もちろん、全地球規模のコスト・パフォーマンスで考えれば植物のほうが安上がりだから推進するべきだし、可能な限り植物で栄養補給というのは、この映画でもメッセージとして出てくる。
だが、栄養学的には、人間の完全なる健康に必要な栄養を摂取する為には、植物だけでは補えない栄養もあるらしいから。
つまり、ある程度はなんらかの肉も食わないと、完璧な健康にはなれないってこった。
もっとも、多少不健康になるか、肉体の運動性能が落ちるだけになるだろうから、無視してもいいのかもしれないが。
それぐらいなら不自然食品を食い続けるのとほとんど変わらないという見方もあるかもしれないしね。

まぁ、でも、たしかに気分良く食べられるものではないが、それでも、遺伝子組換え穀物業者の言う"(どのような方法であっても)収穫量を上げない限り全地球規模の食料危機には対応出来ない"という意見も一理あると思う。
こう言っちゃなんだけど、もう、地球っていうか自然がまかなえる人口をとっくに超えちゃってると思うんだよね。
っていうか、ぶっちゃけ、地球上の他の生物に比べて明らかに人類の寿命は長くなりすぎてると思う(w。
あんま言いたかないけど、これらの"不自然"食品で多少寿命が短くなったぐらいの方が、地球の生態系的には丁度いいのかもしれない。
個人の自由といえば個人の自由なんだけど、それでも、みんなが割りきって太く短い人生を歩むことにしてくれたら、自然食品だけでも人類はまかなえたりしないのかな(w?
まぁ、どっちにしろ、結局、現実的には"不自然"とも上手に付き合わなきゃならない時代になってしまったってことだ。
"自然"の価値はどんどん高まり、金持ちしか入手できなくなる。
そして、貧乏人は安い"不自然"と共に生きていく事になる。
もし全地球規模で、"不自然"を放棄したら、限り有る"自然"を巡って争いが起きることになるだろう。
当然、貧困国や貧窮層を抱えた国家では治安が悪化するだけでなく、国家間の争いが広がり、最悪の場合は第3次世界大戦に発展するかもしれない。
下手すりゃ人類滅亡だ。

昔の姨捨山棄老伝説じゃないけど、誰かを間引き出来ないなら、間引きをしなくても済むような食料供給システムを構築するしかない。
その為なら、たとえ不自然であっても、可能な限り安全な食品を作れる会社であれば、むしろサポートすべきなのではないだろうか?
当然、危険な食品を作る会社は糾弾されるべきだし、この映画の中に出来た会社は問題のほうが多すぎるのだろうが、全地球規模で考えた場合、毒を薬にじゃないけど、これだけの開発力を持った会社であれば、むしろ積極的にサポートすることで情報開示をさせ、透明性を高めることで世論を味方につけ、大量にほぼ安全な"不自然"食品を安定して供給し続けられるようなシステムを構築していったほうが現実的な対応策のような気がする。
儲けられる企業=良くも悪くも優秀ってことだからね。
バカとハサミは使いようじゃないけど、ただ糾弾するよりは上手く利用する方法を考えた方がいいのかもしれない。
だって、この映画の結論では、現状の大企業の経営陣に加えて、自然食品を選べる金銭的余裕のある(比較的上流に近い)中流層だけしか救われないからね、少なくともこの国では。
もっとも、そんな簡単に毒を薬に変えられるような甘っちょろい連中なら、そもそも最初からこんなヤクザな商売はやってないだろうから、土台無理な話だと思うwww。
極端な話、この映画は救いの無い一般人や貧困層を、いたずらに怖がらせるだけの映画でしかないという見方もあるかもしれないね。

posted by LE ROI TRISTE at 19:57| シアトル ☁| 邪道式映画評論 [Movie Reviews] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする